メリークリスマス、俺

‪ 今日はなんてことない平日で、午前も講義があって、夜までサークルで遊んだ。
 そういや今日はクリスマスイブか、サークルの友達とラーメンを食べながら、せっかくだしケーキでも買って食べようかななんて考えた。  
 なんとなく長く電車に揺られたかったもんだから最寄りの2つ奥の駅で下車。
 少し大きめの駅で降りたし、音ゲーでもしようかなってゲーセンに寄って、3クレだけ、久しぶりのチュウニズム。
 
 「そろそろ帰るか」
 
 ゲーセンを出て、近くのファミマに入店。
 スイーツのコーナーへ直行して、いくつか並んでたスイーツの中から美味しそうなチョコレートケーキを手にした。
 少しお菓子のコーナーを眺めていると、"半額"と書かれたカゴの中にはまばらに置かれたスパッツがあった。
 お前らも売れ残りなんだな、とか考えながらレジに向かってケーキを置くと、大学生くらいの可愛い女の子が対応してくれた。
 可愛いのに彼氏いないのかな?なんて思いながら700円くらいのケーキをレジに置いて、千円札を出したところで。「フォークはおいくつ?」って、人の優しさとか、悲しさとか、胸がキュッとなりながら、「1本で大丈夫です」っていつもレジの人にする、不器用な笑顔を浮かべながら言葉を返す自分と、レジの女性のこのケーキをひとりで食うのかって驚いたのか、ひとりなのに聞いてしまって申し訳ない、と思ったのか、少し目を見開いた表情にひどく虚しさを覚えて、だけどレシートもらうときにそっと触れた手は少し暖かく感じた。
 もう12月も終盤でそれなりの寒さ、少し奥の駅で降りたもんだから、バスに乗って帰ろうと思って乗ろうとしたバスは深夜料金で420円って書いてあった。
 今日は歩いて帰ろう。
 いつの間にか悴んでいた手をポケットにしまい、帰る道路には、お互いの手をお互いの体温で暖め合いながら歩くカップル。
 コンビニでの出来事と相まって、敗北感を感じながら、長いキロを歩き終えて、ようやくの帰宅。
 早速ケーキを食べよう、手を洗って冷蔵庫に入ってた綾鷹を取り出して机に並べた。写真を撮ろうかな?とも思ったけれど机の上は汚いし、断念して、入れてもらったフォークでケーキ一口、ふわふわとした苦めの記事と甘いチョコレートのクリームの美味しいケーキだ。
 割と量はあったけれど普段通りのペースで食べ進め、あっという間のラスト一口。その残ったケーキを見たら、ふと、コンビニにあった"半額"の商品がフラッシュバックして、同時にこんなことを思った。


"俺は陳列棚にもならんでなかったな"って。


最後に食べた一口が、少ししょっぱかった。